パロディおとぎ話「浦島太郎と七夕伝説」[1]

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それは古い古い昔のこと。あるところに太郎という若者がいました。太郎は近くの浜辺で魚を獲るのを生業としていました。

ある日いつものように釣竿を肩にかけて浜辺に出向くと、子供たちの一団がなにやら騒いでいます。なんだろうと輪の後ろから覗いてみると、大きな海亀がいるのです。この辺では見かけない大きな海亀に子供たちも興奮して、棒でつついたり甲羅の上に何人も乗っかってドンドンジャンプしていじめていました。亀は甲羅の中に頭を隠し、出てきません。「かわいそうに、困っているだろうに…」太郎は気の弱いところがあったので、子供たちに遠慮がちにやめるように頼みました。

でも子供たちは言うことをききません。彼らはこの辺一帯のワルガキで、地元民からは稚魔(チーマー)と呼ばれていました。逆に「オヤジ狩るぞー!」と追いまわされ、太郎はカツアゲされてしまいました。それでも太郎は「そのお金でこの亀を許してあげてくれ」と頼むのです。カツアゲして満足した稚魔どもは、太郎に侮蔑の言葉を投げかけながら去っていきました。

そのときです。太郎の後ろから太郎の名を呼ぶ声がしました。振り向くと見慣れぬ小人が立っているではありませんか。全身銀色のタイツのようなものを身につけ、目は吊り上り、白目の部分がなくて真っ黒な瞳をしていました。口も何処にあるのか分からず無表情。でも何故か太郎は恐怖感を覚えませんでした。

その小人のそばには、先ほどまでいた亀が、なんと甲羅が空いて船のようになっているではありませんか!太郎は小人よりそっちのほうに驚いて目をまん丸にしました。小人は口も無いのになぜかしゃべっています。勝手に太郎の頭の中で声がダイレクトに響くのです。「私は宇宙から来ました。これは地球人(ちきゅうびと)の目を欺くために亀型にしつらえた船です。この浜辺に不時着して、あの子供たちに見つかり難儀していました。お礼を言います。」太郎は「宇宙って何だ?」とつぶやきました。小人は1本の指を立てて天を指し、「宇宙(そら)」と言いました。(正確には念を送りました。)この後の太郎と宇宙人(そらびと)の会話は全てテレパシーです。

宇宙人は助けてくれたお礼に自分たちの世界へ招待しようと言いました。
太郎もものめずらしさが手伝って、承知しました。不思議なことに亀型の宇宙船は中がとても広く、太郎と宇宙人が2人入っても十分なスペースがありました。中はがらんとして何もありませんでした。椅子があって、ただ前方にスクリーンがあるだけです。「これをどうやって漕ぐんだ?」太郎が質問すると、宇宙人は「我々の操縦法は念波を使います。機械は不要なのです。ただ念ずるだけで宇宙のはてまで行けます。」と答えました。そしてちょっと目をつぶって瞑想しただけで船は浮かび上がり、ものすごいスピードで空を駆け抜け、あっという間に地球の外へ出てしまいました。やがて多くの星が散在する中、一つの星へと吸い込まれていきました。

[2]へつづく

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